朝日新聞 都心版 朝刊に弊社が紹介されました。
メディア

朝日新聞 2010年(平成22年)6月4日 金曜日 13版 30
週間 首都圏
同窓会幹事 お任せあれ
同窓会を開きたいけど、案内はがきの送付とか会場選びとか、幹事役はどうも煩わしく手苦手。 そんなニーズをつかみ、幹事業務を代行する会社が取り扱いを伸ばしている。最近、依頼が増えているのは、 30代の若い世代。薄くなった人との「ご縁」を同窓会に求め、「婚活」の場としても期待する。 (藤方聡)
代行会社への依頼急増
大型連休を控えた4月下旬の土曜日の夕方。東京都立川市で、国分寺市立第一中の同窓会があった。 1992年に卒業した約280人のうち、約90人が参加した。住所確認や案内状送付など幹事業務を担ったのは、卒業生ではない。 2002年設立の株式会社「同窓会ネット」だ。東京都と大阪市にそれぞれ営業拠点を持つ。
同窓会の開催までには、いくつかの関門がある。依頼から開催まで、3~4ヶ月掛かる。
卒業生が用意するのは、卒業アルバムなどに掲載された住所録や名簿。 同社が個人情報の管理に気を配りながら住所と名前を電子データにする。 卒業生の同窓会発起人と同社が差出人となり、日時と場所を記した案内はがきを送る。この段階で卒業生本人にはがきが届く割合は3割。 6割以上のはがきが「あて名不完全」で戻って来るという。
次のステップは、同窓会ごとのホームページの立ち上げと正式な案内状の送付、そして転居先不明者リスト作りだ。
ホームページには、幹事のあいさつや同窓会の日時や場所、会場の地図、参加者の名簿が並ぶ。 パスワードは同窓会ごとに振り分けられ、卒業生は「掲示板」にアクセスできるようになる。 「結婚や育児、仕事の話が書き込まれ、プレ同窓会のようになります」と同社の担当者。
この段階になると、ホームページを仲立ちとして連絡が活発に。 不明だった同級生の連絡先が年賀状を交わしている友人などから判明し、次第に不明者の数が少なくなる。 「芋づる式に住所が分かる場合も多いですね」と社長の伊丹正人さん(48)。 卒業後の年数などによって幅があるが、最終的な住所判明率は70~80%になるという。
請負コストは、同窓会の会費に上乗せされる。会費は1人7千円から。 取扱件数は、設立当初では年間20件あまりだったが、今年は20倍の400件程度にまで増える見込みという。
婚活の場にも30代注目
国分寺市立第一中の同窓会の冒頭。元生徒会長の男性が「パートナーを見つけに来ている人もいますね。今晩は盛り上がりましょう」とあいさつした。 出席者は30代前半。会も終わりに近づいたころ、来賓の教諭が「ひとりもんの人、手を挙げて」と呼びかけると、会場のあちこちから手が。 かつての同級生らは2次会へ流れていった。
「どうやら、婚活の場としても利用されているようですね」
50代の別の教諭が言った。
同社によると、最近増えているのは、今回のような30代からの依頼。 依頼件数全体に占める30代の割合は、04年の35.8%から、09年には45.3%と10ポイント近く増えた。 20代以降の世代別でも1位になっているという。
幹事を務めた森田崇さん(33)は「10代に同じ時間を共有できた仲間とは、なんでもフランクに話せます。 卒業以来、同級生とあまり連絡をとっていない人もいます。かつての縁を復活させたいですね」と言う。
伊丹社長はこう分析する。
「近所や親類との付き合いを避けてきた世代が少子化や不況で、頼るべき人や会社がないという現実を実感し、 人との縁を見直しはじめているのでは」
若い世代で「出会いの場」としても評価されつつある同窓会。だが、個人情報保護の強まりが開催に立ちはだかる。
同窓会やクラス会は、住所録や名簿からの連絡が第一歩。しかし、卒業アルバムに掲載された住所録などは不動産の勧誘などに利用されたこともあり、現在では全国的にほとんど姿を消した。 たとえば、横浜市の小中学校では、市教育委員会によると、1998年ごろを境に掲載されなくなったという。 同市教委の中野修一主任指導主事は「同窓会で利用できる名簿や住所録は、公立校にはないですね。 以前に比べ、確かに開催しづらくなっています」と話す。
重要な手がかりがなくなった今、住所の把握に使えるのは、大勢の同級生が集まる成人式。 担任だった教諭に相談する方法もある。同社は携帯電話のアドレスを活用したサービスなどを検討している。
国分寺市立第一中の同窓会。中学時代の思い出や、仕事、子育ての苦労話が交わされた=東京都立川市、藤方写す
支え合いに回帰
著書に「街場の現代思想」などがある神戸女学院大の内田樹(たづる)教授の話
80年代以降、親族、地域、企業といった共同体を解体され、「こちらも迷惑を掛けない代わりに、そちらからも迷惑をかけないでくれ」という考え方が推奨された。 だが、共同体に属さず、自己決定・自己責任を貫く生き方は豊かで安全な社会においては許されるが、 乏しい資源を奪い合う社会で孤立した若者はリスクにさらされる。 若い世代で相互扶助的なネットワーク形成に対する関心が高まっているのは、安全保障上当然のことだろう。
