旧友との再会は、新しい関係の始まり

同窓会ネット

旧友との再会は、
新しい関係の始まり

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面倒な同窓会幹事役を代行。
支援ビジネスに活路を見出す

同窓会ネット(大阪市)

ご無沙汰している同級生と、昔話に花を咲かせたい。だが、自分から言い出すと、面倒な幹事役が回ってくる。世話役をしても集まりが悪かったり、行き届かない事が生じて不評を買ったりすると割に合わない。
そんな心配事はご無用。手間暇のかかる案内状の制作や発送、出欠確認や会場手配、そして司会進行など、同窓会幹事役のすべてを請け負ってくれるのが、同窓会ネット(大阪市)である。

自らの体験がきっかけ

幹事は卒業名簿を用意するだけで後は全てお任せ。そんなユニークな幹事代行ビジネスを立ち上げて4年目になる。「口コミで徐々に広まり、やっと社会的に認知されるようになりました」と話す代表取締役の伊丹正人さん。話題のニュービジネスは、伊丹さん本人が幹事役をした体験から生まれた。
同窓会ネットの設立は2002年11月。その3ヶ月前の8月、伊丹さんは高校の同窓会幹事の一人を務めた。
「連絡のつかない同窓生探しに苦労したり、出欠の確認電話を自宅にして家族の方に不審がられ、嫌な思いもしました。ところが、同窓会は盛況で大成功だったのです。皆から『幹事のお陰で楽しかった』と感謝されました。その時、『これ、仕事にしたらええかもしれん。こんなに喜ばれる仕事ってないかもしれない』と思ったのです」

失敗からのノウハウを学ぶ

思い立ったらすぐ実行に移すのが伊丹さんの性格。だが、本業の不動産会社経営とは業態が違う新規事業だった。採算の目途も立たなかったが「やってみよう」。決断は早かったが、モデルとなる同業他社はない。同窓会は数多いが、ターゲットをどう絞り込めばよいかも分からない。
半年ほど試行錯誤した後、業務内容を紹介するだけのシンプルなホームページを立ち上げてみた。しかし、反応は皆無に等しかった。
宣伝用のリーフレットを、大阪市内の飲食店において回るローラ作戦も展開しがたが、手応えはつかめなかった。
「従業員2人と私の3人で、1人1日平均40~50店を訪問しました。頭を下げてお願いをして、『ええよ』と言ってくれるお店は、10件に1件か2件です。『置くとなんぼくれまんの』と、やんわり断られたり、いろいろでした。ホテルには相手にしてもらえませんでした。前例がないから当然といえば当然ですが、理解してもらうのに時間と根気がいりました。胡散臭いと思われ、悔しい思いも随分しました」
「とにかく実績を作ること」――そう考えた伊丹さんは、知り合いに頼んで同窓会をしてもらう事にした。第1号は、設立5ヶ月後の03年3 月だった。実験的に試みた幹事代行は数件。いずれも大赤字だったが、その失敗がノウハウの構築に役立った。「何事も実際にやってみないとわからないものですね」と、伊丹さんはしみじみと述懐する。

会費だけで全てお任せ

同窓会ネットの役割は、幹事から卒業生簿を受け取って会費を設定すると、その後の案内状発送、参加者の名簿作成から会場や2次会の会場手配まで、一手に請け負う。
料金は食事代など諸経費込みで、1人当たり7000円から1万円までの3コースと、予算に応じたフリープランの4コースが用意されている。
代行手数料や前金、諸経費の立て替え代は一切、請求しない。当日、出席予定者が欠席しても、同窓会に負担はかけない。同窓会で幹事にとって面倒なのは、転移先不明で返ってくる案内状の対応だが、同窓会ごとのホームページを開設して、掲示板でほかの同級生に連絡先の情報提供を呼びかけるので「7割ぐらいの連絡先は判明する」という。
掲示板には案内状に記されたID,パスワードでないとアクセスできず、同窓会以外には閲覧できないようセキュリティーにも万全を期している。
会費で全てを任せられ、終わった後もホームページで同窓生同士が情報交換し、コミュニケーションの場としても役立つとあって利用者には好評だ。「卒業して20年以上経っている上、住所表示の変更になった地区だったが、新住所で案内状を出して頂き助かった」など同窓会ネットに届く御礼のメールは数多い。

「口コミ」が奏を効した

設立1年目に22件だった受託件数は、2年目の04年には114件、3年目の05年には218件と順調に推移していった。最近ではマスコミにも取り上げられ、エリアは高知県と沖縄県を除く全国46県にまで拡大、東京事務所も開設した。
実績と知名度、信用もついてきて社会に認知された同窓会ネット。従業員11人のほかに、アルバイトの外務スタッフが、リーフレットを飲食店に置いて回る足を使った地道な営業と、インターネットのメリットを活かした広報・宣伝活動を展開しているが、「広まったのは口コミの効果が大」と伊丹さんは次のように分析する。
「ネットを見て申し込んでこられるのが大半ですが、端緒は口コミが多いのではないでしょうか。利用されたお客さんの「『至れり尽くせりでよかった』『便利だし、費用も会費だけでやってくれる』などという評判や話題が口伝えに徐々に広まると、「そこまでやってくれえるなら、今度は利用してみるか』おいうように、いろんな人の頭の隅っこに幹事代行の存在がインプットされていく。それが引き金となって、わが社のホームページを検索した人から同窓会の時に依頼がある。そういったパターンが多いように思います」

次の目標は校友会の運営

伊丹さんは、23才の時に不動産会社を退職して独立、27才で法人化した。取扱額の大きな不動産と違って、同窓会幹事代行は地味でニッチなビジネスである。
会場のホテルや飲食店からの手数料(5~10%)では採算が取れないので、記念写真の撮影や記念誌の発行、CD-ROMの作成・販売収入で利益確保に務めている。だが、卒業生が数百人なのに集まったのは十数人、という苦い経験もあって、初年度は800万円の赤字。単年度決算で収支トントンになったのは3年目からである。赤字は不動産収益から補填してしのいだ。
「3年で黒字という目標は、一応達成できましたが、達成できなくてもやめるつもりはありませんでした。やってみて、あんまり儲かる仕事ではない事は分かりました。例えば何十年も前の卒業時の名簿だと整理されていないから、宛先不明で返信される数が多く、所在確認や案内状の再発送、出欠確認に大変な労力と時間を要し、採算が取れないと思うケースがあります。しかし、同窓会はだれにでもありマーケットが広いこと、そしてビジネスを通じて、さまざまな角度から物事を考える事が出来るので、これをベースにいろんな展開の可能性がありまいす。人々の出会いも生まれ、交わりの中から得た情報がビジネスのヒント、アイデアにつながっていくこともあり得ます。不動産の仕事より面白いし、やりがいがありますよ」
その延長線上で同窓会ネットは、4月から高校や大学などの卒業生で組織されている校友会事務局の運営・管理の支援ビジネスをスタートさせる。
「母校愛を中心につながっている校友会に若年層離れやジェネレーションギャップによって昔のような結束が保てなくなったということを最近、よく聞きます。また、個人情報保護法によって名簿管理が困難になるなど、運営面での戸惑いもあるようです。こうした問題面での戸惑いもあるようです。こうした問題を解決し、活性化させる支援と会員にメリットをもたらすサービス提供をしたい」と伊丹さんは話す。
具体的には、校友会専用のホームページで情報を発信し、それを基に同期や趣味の合った同士のコミュニケーションをWeb上で高め、バーチャルな関係からリアルな関係につなげていく。会員にはID、パスワードを発行し、開示可能な情報を個々に確認した上でデータベースを構築する。
さらに大手出版社などとも提携し、ホームページには福利厚生や旅行案内など、ためになる身近な情報も提示していく。こうした一連の支援システムを同窓会ネットが作成するのだ。Web上で校友会費を納めた会員から、一人当たり年会費の30%を手数料として徴収、それで運営・管理をプロモートする仕組みである。
伊丹さんの新たな目標は、ネットをコミュニティーの場にした校友会のリニューアルだ。

[会社概要]
会社名/株式会社同窓会ネット
所在地/大阪市北区太雄寺町2-21ニュープラザビル10F
設立/2002年11月
従業員/11人
年商/8000万円

(毎月15日号連載)

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