夕刊フジ9月22日23日号「あの日に帰ろう上/下」として掲載・紹介されました。
お知らせ
あの日に帰ろう
同窓会ができるまで -上-
突然の幹事指名にも安心
面倒な仕事全部やります
人気呼ぶ「代行会社」
懐かしさだけ満喫できる
「同窓会の幹事をやってくれへんか」。旧友から突然、こんな依頼をされたら、あなたはどうしますか?
「同窓会」という言葉からは、郷愁を誘う響きがあり、懐かしさが込み上げてくるものの、開催場所の予約、同級生への出欠確認など手間のかかる作業を考えると、しり込みしてしまう人も多いはず。そんな幹事業を代行してくれる会社が人気を呼んでいる。いまどきの「同窓会の作り方」を探ってみた。(水谷圭助)
11月14日に幹事のひとりとして運営しなければならない「同窓会」が迫っている。京都宝ケ池プリンスホテルで行われる母校、同志社中高の同窓会。全卒業生が対象になっているこの同窓会は例年、700人前後の先輩、後輩たちが参加する。クラス単位の同窓会とはケタが違う一大イベシトだ。もちろん、これだけのイベントを取り仕切るとなると、幹事も有志数人というわけにはいかない。毎年、高校を卒業して25年目の卒業生たちが、「幹事学年」として、同窓会を運営する慣例になっているのである。25年目にめぐってくる、この一大イベントにあたり呼びかけを始めた。いよいよ本番が迫ってきた今年の夏以降、幹事の主要メンバーは、仕事に差し支えない週末の夜などに、2、3週間に一度の割で、企画会議を開いている。高校卒業から25年目というと42、43歳。家業を継いだり、自分で会社を興した者は社長として、サラリーマンになった連中は管理職として、結婚して主婦になった者は受験生を抱えていたりと、忙しい日々を送っている。時間的余裕はないはずなのだが、中年真っただ中のおっちゃんとおばちゃんたちは、同級生と「何かをつくる」という高校時代の学園祭のノリで、幹事の仕事を楽しんでいるのだ。
同窓会を自分たちで企画していくのは楽しいが、幹事の仕事が何かと面倒なのは、だれもが知るところだ。できれば、そんな手間のかかる仕事はパスして、同窓会を開き、懐かしさだけを味わいたい、というのが本音だろう。
そんなニーズを反映してか、同窓会の幹事業を代行してくれる会社が人気を呼んでいる。
大阪市北区にある「同窓会ネット」もそんなひとつだ。「この仕事を始めようとしたきっかけは、わたし自身の同窓会なんです」伊丹正人社長が「同窓会ネット」を設立したのが2002年11月。「その年に、高校の同窓会が22年ぶりにありました。それで、幹事の仕事の大変さがわかった。同時に、この作業を手助けすることがビジネスとして成り立つんじゃないかと思ったわけです」しかし、船出はけっして、順風満帆ではなかった。
あの日に帰ろう
同窓会ができるまで -下-
幹事代行業も楽じゃない
ネット駆使して人探し情報に「奔走」
アナログな仕事積み重ね
ノウハウシステムを構築
「正直なところ、いまでも、幹事の代行業というのは、広く認知されているとは思っていません。ただ、始めたばかりのころに比べると・・」
同窓会の幹事代行業「同窓会ネット」の伊丹正人社長が、2002年11月の設立当時を振り返り、苦笑いを浮かべる。「飲食店などに、業務内容の書いたパンフレットを置かせてもらっていたんですが、個人情報を扱う仕事ということで、うさん臭い目で見られたこともありましたね」
ここで、「同窓会ネット」の業務内容を紹介しておこう。まず、同窓会の幹事から、同窓会名簿を提供してもらい、案内状を送付。出欠の確認をするためだが、例外なく、引っ越していて、あて先不明で案内状が返ってくる。「幹事さんにとって、こういう人の扱いがいちばん面倒だと思うんです。それで、同窓会ごとにインターネットのホームページを開設。掲示板で、他の同級生から、住所が不明の人の情報を募るわけです」と伊丹社長。次に掲示板から集められた情報を加え、参加者名簿を作成。参加人数が決まったところで、会場を予約することになるが、高級ホテルから居酒屋まで予算に応じて選ぶことができる。希望があれば、2次会、3次会のセッティングも。さらに同窓会当日の受付、司会に始まり、写真やビデオの撮影。記念誌やCD-ROMなども製作してくれる。
設立時には胡散臭く見られたことも
「1年目はシステムを構築するのでやっと。幹事の仕事というのは、今の時代に逆行するようなアナログな部分が多い。お客さんの声を聞きながら、今のようなノウハウをシステム化することができました」と伊丹社長は説明する。
平均すると、現在では、月に10数件の依頼があるそう。正月と盆が同窓会開催のピーク。今年の8月14日は土曜日ということもあり、1日で9件の同窓会をプロデュースした。
伊丹社長は「もっとネームバリューを上げなければと思ってます。ただ、広く宣伝するより、いまのところは、お客さんのロコミが、大きな力になっています。というのも、この商売は信用が最も重要。きれいごとじゃなく、『依頼してよかった』らと言ってもらえるサービスを提供することを心がけています」と話す。
わが同窓会まで2ヵ月を切った。追い込みにかかっている同級生代表の伴康夫さんは「最近は700人ぐらいの参加者が続いているから、今年は800人は集めたい」と抱負を語っている。近く同窓会を開く人、将来同窓会を計画している人。「同窓会ネット」のような幹事役代行業の手を借りるもよし。われわれのように手作りの同窓会にこだわるもよし。来週からスタートする秋の竸馬のGIシリーズの合間を縫って、微力ながら幹事のひとりとして運営に協力したいと思っている。